Index

シネマ・エッセイ

あああああああああああああああああああああああああああ
今日もどこかで・・・

家に帰るんだ!

おいらは売れっ子プロデューサー

アルフレードへの手紙

さらば、故郷の映画館

今はもうだれも

終電に乗った男

ばあちゃん



のほほんラブ

黒い影

そんな日は・・・

とある休日出勤の日

まなざし

見知らぬオッサン

帰ってきた名画座

ある日曜日の情景

そして今日も、僕の足は映画館へと向かう

映画館に愛を込めて!















映画館に愛を込めて!」                        
 映画館に愛を込めて!


 1903年、東京・浅草で彼は生まれた。 

 日本の発展と共に、彼はすくすく成長した。

 力道山や大鵬、長嶋茂雄よりも人気があった。

 有頂天になった彼は、いろんな顔を見せてくれた。

 しかし、人気はいつまでも続かない。

 アイドルタレントが個性派俳優を目指すが如く、彼も徐々に個性的になっていった。    

 おそらく、これからもそういう傾向が続くのではないだろうか。

 ひとつだけ分かっていることは、

   ―― 彼は絶対、死なないだろう ――

 ということだ。

 彼のことを好きな人がいる限り・・・・・

 これからも彼(映画館)は、いろんな顔(映画)を見せてくれるに違いない。

                                                    2000/06/25
 

そして今日も、僕の足は映画館へと向かう                
 そして今日も、僕の足は映画館へと向かう


 僕は学生時代、池袋から出ている私鉄沿線に住んでいた。

 だから、遊びに行くといえば池袋だった。

 今はもう無くなってしまった東口の文芸坐や、

 当時は名画座だった西口のロサ会館(シネマロサ、シネマセレサ)によく映画を観に行った。

 文芸坐のオールナイトで、昔の日本のSF映画の特集があり、

 「ガス人間第1号」とか「美女と液体人間」とかいう訳のわからない映画があって、

 すっげぇ若い三橋達也さんや八千草薫さんが出ていた。

 社会人になって何年か経ったある日、

 シネスイッチ銀座で「ニュー・シネマ・パラダイス」を観た。

 観終わったとき、顔はグシャグシャ、目は真っ赤。 

 映画館を出るのが恥ずかしく、地下鉄の駅までずっと下を向いて歩いた。

 いい映画とめぐり逢うために、休日は必ず映画館に行く。 

 観たい映画が一杯あるのだ。

 だから今日も、そして今日も、僕の足は映画館へと向かう・・・・・。

                                                    2000/07/23

   注) 文芸坐は2000/12/12に新文芸坐として復活しました。
 

ある日曜日の情景      」                    
 ある日曜日の情景  −むかし働き始めたばかりのころ−


 昼過ぎにやっと目が覚めて、すぐに気がついた。

  − あの映画は今週までだったなぁ −

 今日観ておかなければ見逃してしまう。

 しかし、財布の中はカラッポだった。

  − 明日、給料日なんだけどなぁ −

 ぶつぶつ独り言を言いながらアパートを出て道を歩いていると、500円玉が落ちていた。    

 すぐさま交番に駆け込み、お巡りさんに渡した。

 なぁんてことをするはずもなく、当然の如くそのまま自分のポケットにほうり込み、

 近くのパチンコ屋さんに入った。

 こともあろうに、拾った500円が5000円になった。 めちゃくちゃラッキーだ。

 その金で映画館にあの映画を観に行った。 予想通り、いい映画だった。

 帰りにふらっと居酒屋に入り、残った金で一杯飲みながら旨い物をたらふく食った。

 実に幸せな気分で、アパートに帰った。

 いい日曜日だった。

 そして寝るときに、こうつぶやいた。

  − 本当にこんなことがあればいいのになぁ −

 こうして、何もなかった日曜日が、観たい映画を見逃してしまった日曜日が、

 無常にも過ぎていく。

                                                    2000/10/31
 

帰ってきた名画座      」                    
 帰ってきた名画座


 文芸坐が、復活した。

 1997年に惜しまれつつ閉館した名画座が、復活した。

 学生時代によく通った名画座が、復活した。

 以前と同じ場所に新しいビルになって、復活した。

 以前と同じスタッフで、復活した。

 平成12年12月12日12時に、復活した。

 世界に誇る日本映画の金字塔、黒澤明監督「七人の侍」で、復活した。

 『 新文芸坐 』 として・・・。

 そして僕の心の中の映画の虫がまた、騒ぎ始めた・・・。

                                                    2000/12/12
 

見知らぬオッサン                           
 見知らぬオッサン


 ある日、銀座に映画を観に行った。

 いや、銀座で映画を観る予定だったのだ。

 そして、ちょうど銀座4丁目の和光の角を曲がろうとしているとき、

 見知らぬオッサンに声を掛けられた。

  − いよおおぉ! 久しぶりぃ〜 −

 見知らぬオッサンは、明らかに僕に向かってこう言った。

 知り合いにこんなオッサンがいただろうか?と思い、記憶の中を検索してみたが、

 検索結果は0件だった。

 しかし、見知らぬオッサンは、本当に久しぶりに知人に会ったような懐かしそうな顔で、

 僕の顔をまじまじと見ている。

  − 困ったなっ −

 僕は、見知らぬオッサンの期待を裏切るのは申し訳ないと思い、

  − やあ、オジサン元気ぃ〜 −

 とだけ言って、そのままスタスタとその場を歩み去った。

 後ろを振り向かなかったので、見知らぬオッサンがどういうリアクションをとったのかは

 見ていない。 

 別人だということに気付いただろうか?

 あるいは何も気付かず、久しぶりに懐かしい知人に会ったことに満足しただろうか?

 はたまた別人だということに気付きつつも、僕の咄嗟のギャグ的対応を喜んでくれただろうか?

 もしかすると、この見知らぬオッサンは、誰か適当な人間を見付けては、

  − いよおおぉ! 久しぶりぃ〜 −

 と声を掛け、こちらの反応を楽しんでいるのかもしれない。

 今度、銀座4丁目の和光の角で、その“見知らぬオッサン”に会ったら聞いてみたい気がする。

 そんなわけで、その日は急遽予定を変更して、日比谷のシャンテ・シネで、フランス映画の

 「ハリー、見知らぬオッサン」・・・じゃなかった・・・「ハリー、見知らぬ友人」 を観たのだった。

                                                    2001/08/26
 
 

 まなざし           」                   
まなざし


とある夕暮れの街角で、天使がポツンと佇んでいる。

その天使のまなざしは、ずっとあなたに注がれている。

お母さんに抱っこされた赤ん坊の頃のあなたに、

街で迷子になって泣き叫んでいた頃のあなたに、

遅くまで夢中になって遊んでいた頃のあなたに、

初めてクラスの子とデートをした頃のあなたに、

そして、いつの間にか大人になってしまったあなたに・・・。

静かで優しい天使のまなざし。

その柔らかなまなざしは、何も気付かぬあなたの背中に注がれて、

そのまますうっと消えていく。

もしもあなたが背中にまなざしを感じたら、そっと後ろを振り向いてごらん。

ブルーノ・ガンツのような顔をした心優しい天使が、

じっとあなたを見守ってくれているかもしれないよ。


― 「ベルリン・天使の詩」を愛するすべての映画ファンに捧ぐ ―
                                                    2001/12/16  
  

とある休日出勤の日」                         
 とある休日出勤の日


 今日は日曜日。

 なのに何故か会社にいる。 昨日の土曜日もそうだった。

 長い年月仕事をしていると、こういうことがたまにある。

 当然のことながら、映画館に映画を観に行けない。

 こんなときは何らかの禁断症状が出てくるものだ。


 朝10時半頃、寝ぼけ顔のまま会社に来て、1時間ほどパソコンと向かい合って仕事をし、

 ふと顔を上げると、何故かジョン・マルコヴィッチがいる。

 なぜ、こんなところにジョン・マルコヴィッチが・・・? と思って横を見ると、

 そこにもジョン・マルコヴィッチが・・・!

 どいつもこいつもマルコヴィッチ、マルコヴィッチ、マルコヴィッチ・・・・・・

 うわっ、わっ、うわあぁぁぁ〜っ!・・・・・・


 ここで目が覚めた。 どうやら居眠りをしてしまったらしい。

 いかん、いかん、さあ仕事だっ! と意気込んでパソコンを見ると、

 ディスプレイに、ジョン・マルコヴィッチの顔がデカデカと映っていた・・・


                ― 「マルコヴィッチの穴」にハマってしまった映画ファンに捧ぐ ―
                                                    2002/03/27 
 

そんな日は・・・      」                     
そんな日は・・・


 雨降りでジメジメして気分が晴れない日、

 北風がピュウピュウ吹いて心まで凍えてしまいそうな日、

 そんな日は・・・


 仕事でミスをして上司に怒られてしまった日、

 残業続きで身も心も疲れ果ててしまった日、

 そんな日は・・・


 無神経な発言で友達を傷つけてしまった日、

 些細なことで喧嘩して恋人と別れてしまった日、

 そんな日は・・・


 そんな日は、ふらっと映画館に入って隅っこに座ろう。

 やがて開映のブザーが鳴り、場内が暗くなり、幕が開いて白いスクリーンが現れる。

 予告編が流れ、そして、本編のタイトルが映し出される。

 さぁ、映画を観よう! あなたが大好きな映画を。

 スクリーンを見つめるあなたの顔にはきっと、ほんの少しだけ笑顔が戻っているはずだ。

 「カイロの紫のバラ」のミア・ファローのように・・・


  ― 「カイロの紫のバラ」を愛するすべての映画ファンに捧ぐ ―
                                                   2002/12/08  
  

そんな           」                     
            黒い影    注)これはフィクションです


 僕には、黒い影が見える。



 高校生の頃、別のクラスの体育の授業を、

 教室の窓からぼんやり眺めていた。

 サッカーボールを蹴るA君には、

 ずっと、黒い影が纏わり付いていた。

 3日後、A君はバイク事故で死んだ。



 大学生の頃、クラブの先輩のBさんが病気で入院した。

 見舞い客に笑顔で話すBさんは、

 とても元気そうだったが、

 Bさんの隣には、黒い影が添い寝していた。

 翌日、容体が急変して、Bさんは死んだ。



 10年ほど前、会社で仕事をしていると、

 Cさんが突然、席を立った。

 残業続きで、かなり疲れていたようだ。

 Cさんは、黒い影に押されるように階段を上がっていき、

 そのまま屋上から飛び降り自殺した。



 僕は最近、体調が悪い。

 体がどんどん痩せ細っていくようだ。

 ふと目を凝らすと、ずっと向こうの方から、

 僕の方に向かって、黒い影が近づいてくる。

 ゆっくり、ゆっくりと・・・



 僕には・・・黒い影が・・・見える・・・・・・


― 「the EYE」に切なさを感じた映画ファンに捧ぐ ―
                                 2003/06/01
  

とある休日出   」                         
 のほほんラブ


 あなたと付き合いだして2ヶ月。
 少し髪型を変えてみた。
 ちょっとだけウェーブを当てたショートボブ。
 自分で言うのも何だけど、少しは可愛くなったかな?
 なのに、あなたは気付かない・・・
 
 君と付き合いだして2ヶ月。
 デートのときの君はいつもジーンズ。
 スカート姿の君も見てみたいんだけどなぁ。
 そう言えば、なんか髪型が変わったような・・・
 気のせいかな?
 
 
 あなたと付き合いだして4ヶ月。
 いつもあなたの部屋は散らかり放題。
 だから内緒で、あなたの部屋を掃除してあげた。
 結構大変だったけど、少しは片付いたかな?
 なのに、あなたは気付かない・・・
 
 君と付き合いだして4ヶ月。
 いつも君は綺麗好き。 反対に僕は無頓着。  
 だから、僕の部屋はいつも散乱状態。
 でも、何故か今日は片付いてるような・・・
 気のせいかな?
 
 
 あなたと付き合いだして半年。
 あなたに御飯を作ってあげるとき、スープはいつもコンソメ味。
 でも今日は、ホットなチリ味に変えてみた。
 初めてのチリ味だけど、うまくできたかな?
 なのに、あなたは気付かない・・・
 
 君と付き合いだして半年。
 君が作ってくれる料理はいつも美味しい。
 そして、君の自慢のコンソメスープ。
 でも、今日のスープはやたら辛いような・・・
 気のせいかな?
 
 
 この先、あなたと一緒にどこへ行こうかな?
 いつも気付いてくれないあなただけど。
 いつもあなたのそばにいてあげたい。
 だから・・・
 
 この先、君と一緒にどこへ行こうかな?
 ズボラでガサツな僕だけど。
 いつも君と一緒にいたい。
 だから・・・
 
 
 君(あなた)の行くところなら、どこへでも・・・


                   ― 「恋する惑星」を愛するすべての映画ファンに捧ぐ ―
                                                    2003/08/13 
 

        」                         
 声


 冷たい風が吹き抜ける、喫茶店へと向かう道。
 木枯らしに吹かれて舞い落ちる枯葉が寂しそう。
 寒そうに背中丸める君も、寂しそう。
 
 ショパンの「別れの曲」が流れる喫茶店。
 空になったコーヒーカップが寂しそう。
 「元気でね」と言われ涙を浮かべる君も、寂しそう。
 
 小雨の降り出した帰り道。
 しっとり濡れたアスファルトが寂しそう。
 傘も差さずにとぼとぼ歩く君も、寂しそう。
 
 そんな君を、僕は空の上からじっと見守っている。
 天使である僕の存在を、君は知らない。
 僕は心の声で、そっと君を呼んでみる。
 
  − お〜い、さびしんぼう? −
 
 君はすぐに振り向く。
 救いを求めるような君の顔。
 でも君は、僕の声の在り処が分からない。
 
 
 季節は巡り・・・
 
 
 爽やかなそよ風が吹き抜ける、喫茶店へと向かう道。
 暖かい陽射しに照らされた木の葉が嬉しそう。
 あくびしながら背伸びする君も、嬉しそう。
 
 ショパンの「子犬のワルツ」が流れる喫茶店。
 湯気の立つコーヒーカップが嬉しそう。
 「元気だね」と言われ微笑む君も、嬉しそう。
 
 綺麗な夕焼けに染まる帰り道。
 カラッと乾いたアスファルトが嬉しそう。
 ジャケットを脱いでテクテク歩く君も、嬉しそう。 
 
 そんな君を、僕は空の上からじっと見守っている。
 天使である僕の存在を、君は知らない。
 僕は心の声で、そっと君を呼んでみる。 
 
  − お〜い、さびしんぼう? −
 
 僕の声は、もう、君には聞こえない・・・


                   ― 「さびしんぼう」を愛するすべての映画ファンに捧ぐ ―
                                                    2003/12/23 
 
ばあちゃん        」                     
 ばあちゃん


 ばあちゃんが逝った。 子供の頃から大好きだったばあちゃんが逝ってしまった。
 
 
何年か前に東京に遊びに来たとき、俺のアパートの部屋に、
 テレビから録画した『舞踏会の手帖』のビデオがあるのを見付けて、
 「昔、この映画、何回も観に行ったんじょ。」
 と言っていた。 そんな、映画やテレビドラマが大好きなばあちゃんだった。
 
 
ウォン・カーウァイ監督の『天使の涙』にこんなシーンがある。
 金城武演じるモウがふざけ半分で、親父がステーキを焼いているのを
 ビデオで撮っている。 親父も、照れくさそうだけどなんだか楽しそうだ。
 その親父が死んだとき、モウはこう呟く。
 「あのステーキはもう食べられない。 でもあの味は一生忘れない。」
 
 
実家に電話すると、たまにばあちゃんが電話に出ることがあった。
 ばあちゃんはいつも電話口で、こっちの耳が痛くなるほどのデカイ声で、
 「元気にしよんえ?」
 と聞いた。 俺はいつも「まぁな。」と答えた。
 あの「元気にしよんえ?」はもう聞けない。 でもあの声は一生忘れない。
 『天使の涙』のモウのように・・・。
 
 
ホ・ジノ監督の『八月のクリスマス』にこんなシーンがある。
 ハン・ソッキュ演じるジョンウォンが、親父にビデオの操作方法を教えている。
 でも、頑固者の親父はなかなか理解できない。
 ジョンウォンは、丁寧に番号をふって操作方法を紙に書き始める。
 
 
去年の正月に実家に帰ったとき、新しいビデオ付きのテレビが置いてあった。
 せっかくビデオ付きのヤツを買ったのに、ビデオの使い方が分からないという
 ばあちゃんに、丁寧に番号をふって操作方法を紙に書いてあげた。
 『八月のクリスマス』のジョンウォンのように・・・。
 そして、今年の正月に実家に帰ったとき、「ニュー・シネマ・パラダイス」と
 「カイロの紫のバラ」のビデオを持って帰ってあげた。
 たぶん観てくれたと思うけど、遂に感想は聞けずじまい。 ちょっと心残りだ。
 
 
とりあえず、天国のばあちゃんにこう言っておこう。
 「あと何十年かしたらそっちに感想聞きに行くけんな。
  それまで忘れんと覚えといてくれなあかんでぇ。
  他のビデオも持って行ったるけど何がええで?」


                       ― 天国に行ったばあちゃんに捧ぐ ―
                                                    2004/10/03 
 
終電に乗った男        」                   
 終電に乗った男


 トゥルルルルルルルル・・・・・
 発車のベルが鳴っている。
 新宿駅0時38分発の準急・相模大野行きに、僕は疲れた顔で乗り込む。
  − あぁ〜、今日も終電かぁ〜 −
 吊り革につかまったまま、ため息をつく。
 もう何日も、こんな日が続いている。
 目の前には、酔ってネクタイをだらしなく緩め、眠そうな顔をしたオヤジが座っている。
 そんな光景から逃れたくて、僕はそっと目をつぶる。
 そこは、僕のもう1つの人生(スペアの人生)だ。

 
  そこでも僕は、同じように電車に乗っている。
   他に誰も乗っていないのではないかと思うほど、その電車は空いている。
   「列車に乗った男」のラストで、ジャン・ロシュフォールが見せるような
   穏やかで、そして、どこかワクワクした表情で、僕はゆったりと座席に座っている。
   この電車はこれから何処へ行くのだろう。
   行き先は誰にも分からない。
   やがてその電車は動き出し、スピードを上げながら坂を登って行く。
   ずっと、ずっと、まるで銀河鉄道のように、空へ向かって登って行く。
   どこまでも、どこまでも・・・

 
電車が大きく揺れた。
 その瞬間、スペアの人生から元の人生に引き戻され、僕はゆっくり目を開ける。
 目の前には、ネクタイを緩めた酔っ払いオヤジが、口を開けたまま眠りこけている。
 電車は今、黒い水面を湛えた多摩川を渡っているところだ。
 ゴトンゴトン、ゴトンゴトン、・・・・・・
 鉄橋を渡る音が、僕の疲れた心に心地よく響く。
 僕の降りる駅は、もうすぐだ・・・


                   ― 「列車に乗った男」を愛するすべての映画ファンに捧ぐ ―
                                                    2004/12/31 
 
今はもうだれも        」                   
 今はもうだれも


 誰もが一度は経験する高校の文化祭。
 遠い昔、僕にもそういう時代があったのだ。
 僕の高校では、クラス毎に1枚の旗(かなり大きな旗だったと記憶している)を描き、
 文化祭の期間中、運動場の周りにズラリと立てて並べるのだ。
 自分達のクラスが何を描いたのかはすっかり忘れてしまったけど、
 1年7組の旗だけは今でもはっきりと覚えている。
 あのクラス旗を見た瞬間、
  − あっ、やられた! −
 と思った。 
 そこには“アリス”の3人(谷村新司、堀内孝雄、矢沢透)の似顔絵がマンガチックに
 描かれていた。
 まさにその時代を象徴する旗。
 そう、僕らの世代は、何はともあれ“アリス”だった。
 「遠くで汽笛を聞きながら」「冬の稲妻」「ジョニーの子守唄」「チャンピオン」・・・
 いつも誰かがモーリスのフォークギターで“アリス”を弾き、
 いつも誰かが“アリス”を口ずさんでいた。

 文化祭の学生コンサートでは必ずと言っていいほど“アリス”を歌うバンドがあった。

 「リンダリンダリンダ」で、ペ・ドゥナが「リンダリンダ」や「終わらない歌」を
 体育館の舞台の上で気持ちよさそうに歌っていたのと同じように、
 当時の僕らの仲間も「冬の稲妻」や「ジョニーの子守唄」を
 体育館の舞台の上で気持ちよさそうに歌っていた。

 「リンダリンダリンダ」で、4人の女の子が、想い出を作るわけでもなく、
 友情を確かめ合うわけでもなく、ただひたすらに、
 自分達の時代に自分達の何かを刻み付けようとしていたのと同じように、
 当時の僕らの仲間も、ただひたすらに、
 自分達の時代に自分達の何かを刻み付けようとしていた。

 そんな、何気ないけどかけがえのない青春の一頁。
 今はもうだれも、思い出すこともなくなってしまった帰らざる日々を、
 ほんの少しだけ思い出してみた・・・。


               ― 「リンダリンダリンダ」を観てノスタルジックな気分に浸った映画ファンに捧ぐ ―
                                                    2005/11/13 
 
さらば、故郷の映画館        」                
 さらば、故郷の映画館


 2006年9月28日、徳島ホールが封切り映画の上映を休止した。
 2001年12月に、徳島市の北部に位置する板野郡北島町にシネコンができてから
 徳島市内の映画館は観客数が減少し、毎年1館ずつ閉館していった。
 そして、この徳島ホールの閉館によって、徳島市内の映画館はゼロとなり、
 徳島県内の映画館は前述のシネコン・北島シネマサンシャインと、
 美馬郡貞光町の貞光劇場(1932年開館)の2館のみとなってしまった。
 (貞光劇場は現在は成人映画しか上映していないようだ。)
 
 俺がよく行ったのは、我が家から一番近いところにあったOSグランドだ。
 友達と興奮しながら観た「ロッキー」、初めて女の子と観た「グリース」・・・
 思い出に残る映画は大抵この映画館だった。
 もちろん、徳島ホールでも何本か観た。
 できれば徳島ホールの楽日をこの目で見届けたかったが、現在、神奈川に住む俺には無理な話。
 とても心残りだ。
 
 今後故郷に帰っても、俺の青春時代を支えた映画館は、もう・・・無い・・・


                     ― 我が故郷・徳島の閉館した映画館に捧ぐ ―
                                     2006/10/01


 開館 1946   徳島東宝(徳島市籠屋町)
    1946   徳島東映(徳島市東新町)
    1947   徳島平和劇場(徳島市蔵本町)
    1955   OSグランド(徳島市栄町)
    1962   徳島ホール(徳島市幸町)
    1971   東宝シネマ(徳島市籠屋町)
    1979   徳島松竹(徳島市籠屋町)
    2001/12 北島シネマサンシャイン(板野郡北島町)

 閉館 2002/03 OSグランド
    2003/06 徳島東映
    2004/03 徳島松竹
    2005/09 徳島平和劇場(平和ドルビー、アタック平和)
    2006/01 徳島東宝、東宝シネマ
    2006/09 徳島ホール
 
  
 
アルフレードへの手紙                         
 アルフレードへの手紙


 前略 アルフレード様
 
 先日、閉館間際の“まちえい”という映画館で「ニュー・シネマ・パラダイス」を観ました。
 この映画でも、シチリアの映画館“パラダイス座”が時代の波にのまれて閉館してしまうの
 でしたよね。 僕の故郷でも映画館の閉館が相次ぎ、僕が昔行ったことのある映画館は皆、
 閉館してしまいました。
 
“町から映画館が消える”というのは、とても寂しいものですね。
 最近では複数の劇場が一体化した“シネコン”が映画館の主流になりつつあります。
 そこでは、1人の映写技師が複数の劇場を掛け持ちで担当するそうです。
 その方が映画館を経営する側にとっては経済的なんですね。
 でもそんな話をすると、映写技師のあなたは苦い顔をするでしょうね。
 そういえばあなたは、フィルムが不燃性のものになったとき「進歩はいつも遅すぎる」と
 仰いました。“シネコン”というのは、映画館経営における一種の進歩なのかもしれません。
 
 すみません、話が堅くなってしまいました。
 「ニュー・シネマ・パラダイス」の話に戻しましょう。
 この映画の中のあなたは、まるで人生の師のような、そんな名台詞をたくさん吐かれました
 よね。 過去の名作の台詞を織り交ぜながら、肝心なところではキチッと自分の言葉で想い
 を伝える、そんなあなたの言葉の数々を聞いていると、知らず知らずのうちにトトの視線で
 あなたを見ている自分に気付くのです。
 
 この村を出ろ。長い年月戻ってくるな。我慢できずに帰ってきても私の家には迎えてやら
  んぞ!』
 故郷を持つ僕にとって、この言葉はとても心に染みました。
 そして、僕にもこんなことを言ってくれる人がいたらなぁ・・・とも思いました。
 でも僕は、あなたの言葉を守って故郷に帰ろうとしなったトトのような“できた人間”では
 ありません。 ただ何となく都会に出てきて、ただ何となくそのまま都会で生活しています。
 そんな僕に、あなたは何て声を掛けてくれるでしょうか?
  
 自分のすることを愛せ。子供の頃、映写室を愛したように。』
 僕は今コンピューター関係の仕事をしていますが、自分の仕事を愛しているかと聞かれれば
 答えはノーです。 これではあなたからお叱りを受けそうですね。 
 
でも僕は1つだけあなたに自慢できることがあります。
 僕は“映画館で映画を観ること”を愛しています。
 こんなことを言うとあなたは“そんなこと当たり前じゃないか!”と苦笑いされるでしょう
 か? それとも“よく言った!”と褒めてくれるでしょうか?
 
 何はともあれ、「ニュー・シネマ・パラダイス」は僕にとって永遠不滅の心の映画です。
 これからもこの映画がどこかの名画座で上映され続ける限り、パラダイス座の映写室にいる
 あなたに会うために、僕は名画座の片隅に座っていることでしょう。
 
 僕は、あなたに出会えて、あなたの暖かい笑顔に出会えて、本当に幸せでした。
 さようなら。 そして、ありがとうございました。
 
 草々


                 ― 2006年11月23日、76歳で亡くなられたフィリップ・ノワレさんに捧ぐ ―
                                                    2006/12/23 
 
おいらは売れっ子プロデューサー                    
 おいらは売れっ子プロデューサー


 あぁ、くそっ、まったく忙しいったらありゃしないぜ。
 最近のわがままなアイドルっつうのは困ったもんだ、なんとかならんのかねぇ。
 台詞は全然覚えて来やがらねぇし、漢字はろくに読めねぇし、勘弁してほしいぜ。
 ま、明日は久し振りの休日だし、映画でも観て気分転換するかな。
 そういえば最近、映画も全然観てねぇなぁ。
 とりあえず明日は歌舞伎町にでも繰り出すとして、今日はさっさと寝ちまおう・・・Zzzz・・・
 
   わぁ〜久々の歌舞伎町だぁ〜。
   相変わらず映画の看板がズラリと並んでるなぁ。
   え〜と、何か面白そうな映画は・・・お、これは何だ!
   なんだかシブくてカッチョいい看板だなぁ。
   日本映画かな? いや、違うぞ。
   アンディ・ラウって書いてあるから中国映画かな?
   ラウっていう名前は中国っぽいからなぁ。
   でも中国映画の看板がこんなにカッチョいいわけないよな。
   ん、なになに? あ、そうか、香港映画かぁ、なるほどねぇ。
   香港映画なんてジャッキー・チェンの「酔拳」以来、観てねぇぞぉ。
   じゃぁ、ちょっとこの“何とかアフェア”っちゅうのを観てみるとするか。
 
   おぉ、なかなかいいじゃん。
   香港映画もなかなかやるなぁ。
   シブくてカッチョいいじゃねぇかよ、こいつはちょっとシビレたぜ!
   ん、待てよ、これはひょっとしたらウチのドラマで使えるかもな。
   都合のいいことに、客もあんまし入ってなかったし・・・。
   うん、これちょっとパクっちゃおうかな。 たぶん分かんねぇだろうな。
   うんうん、そうしようそうしよう、俺って天才! うひひ。
 
   そういや、この間のアイドルだけどさぁ。
   あれはちょっと使えねぇよ。 そうそう、あのわがままなアイドルのことだよ。
   他のにしようぜ。 可愛いアイドルなんていくらでもいるんだからさぁ。
   ちょっとアイドル年鑑、見せてみろよ。 ほらほらこの娘なんていいじゃん。
   君達はどうしてこうアイドルを見る目がないのよ。
   なに? 単に自分の好みで選んでるってぇ? そりゃ悪かったね。
 
   で、どうよどうよ、ドラマの視聴率の方は?
   え? 思ったほどでもない?
   ふ〜む、まぁ、最初はそんなもんかな?
   そのうち伸びてくるだろ。
   なんたって香港映画をパクった、いやいや、香港映画にインスパイアされて作った
   ドラマだかんな、うん。
   ん? ウチのサイトの掲示板の書き込みに、ドラマに対して批判的なものがある?
   そんなの無視しろよ。 批判なんてのはどこにでもあるんだからさぁ。
   気になるんだったら、批判的な書き込みだけ削除しちゃったら?
   いいのよいいのよ、なんたってイメージが大切なんだから。
   ん? どうしたの? 20人ぐらいの集団が新宿でデモをやってるって?
   それがどうしたって言うのさ。
   え? 俺の作ったドラマに対して抗議してるみたいだってぇ?
   何だよそりゃ。 何が気に食わんのか知らんけど、そんなもんほっときゃいいだろ。
   そんな連中はどこにでもいるんだからさぁ、いちいち気にしてたらやってらんねぇよ、無視無視。
 
   いやぁ、あのアイドルは可愛いよなぁ、ほんでもって珍しく性格も良さそうだし。
   また使ってやろうかな? うん、そしたら恩に着るなんて言われて
   ディナーに誘ったらついて来たりして、そしたら・・・むふふ。
   あ、いかんいかん、つい妄想しちまったぜ。
 
   おい、今、テレビに映ってるこのデモは何なのさ。
   もしかしてさっき言ってたのはこのデモ隊のこと?
   おいおい、ちょっと待ってくれよ。
   俺が他の仕事してる間に人数が増えたってことかい?
   さっきは20人ぐらいって言ってたじゃねぇか。
   これ、どう見ても100人ぐらいいるじゃねぇかよ。
   冗談じゃねぇぞ、おい。
 
   そうそう、この間の可愛くて性格の良いあのアイドルをディナーに誘ったら
   付いて来ちゃってさぁ。
   いやぁ、もう、最高だよ。 ベリーベリーハッピーだよ。
   その後はどうしたかって? 決まってんじゃんよぉ!
   ここまでいったら、やることは1つしかないでしょうが、えぇ?
   どうだったかってぇ? もう、彼女ったら、むふふふふ・・・・・。
 
   そんなことより、あれはどうなったんだよ、えぇ?
   デモだよ、デモ。 当たり前だろ、ちゃんと覚えてるよ。
   ん? へ? な、な、なんだってぇ?
   デモ隊が1万人規模に膨れ上がっただとぉ?
   プラカードを持って、声高らかに叫びながら赤坂方面に向かってるだってぇ?
   おいおい、ちょっと待てよ。
   で、プラカードには何て書いてあるんだ?
   え? “オリジナル映画を汚すな!”だってぇ?
   んで、え? “ちゃんとリメイク権を買え!”だってぇ?
   んなこと知らねぇよ、何言ってるんだよ、こいつらは。
   おい、なんか外で随分騒がしい音がするぞ、大丈夫なのか? えぇ?おい。
   な、なにぃ? デモ隊が局内に突入してきただってぇ? 
   おい、警備員は何やってんだよ。 警察はなんで来ねぇんだよ。
   冗談じゃねぇよ、俺はケガなんかしたくねぇよ、あ、やべぇ、デモ隊に囲まれたぞっ!
   ぐはっ、石が飛んで来るぞっ!
   うわっ、“プロデューサーを引きずり出せ!”とか叫んでるぞっ!
   ひぇ〜〜〜〜〜たたたたたたたすけてくれぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
   神様、仏様、映画ファンの皆様ぁ〜〜〜どうかお許しを〜〜〜!
   もう2度とパクリなぞしませんからぁ〜〜〜〜〜。
   
 ・・・ガバッ!・・・・・・・・・・
 はっ! ゆ、夢かぁ。 はぁはぁ、ぜぇぜぇ。
 な、な、なんて恐ろしい・・・
 ・・・・・・・・・・ぶるぶる・・・


                 ― 「インファナル・アフェア」3部作を愛する全ての映画ファンに捧ぐ ―
                                                    2007/01/13 
 
家に帰るんだ!        」                   
 家に帰るんだ!


   − 痛っ! −
 誰かに足を踏んづけられた。 
 いつものように朝7時半に家を出た俺は、いつものように超満員の通勤ラッシュの電車に乗っている。
 あまりにも混み過ぎていて、誰に足を踏んづけられたのか分からない、というところが腹立たしい。
 次の駅に停車するため、電車が減速する。
   − あいたたたたっ! −
 吊り革に捕まっている手がちぎれそうだ。
 どうしていつもいつも、毎朝こんなギュウギュウ詰めの電車に乗らなければいけないのだろう。
 たまには会社の仕事など放ったらかして、そのままUターンして家に帰り、
 もう一度ゆっくり足を伸ばして惰眠をむさぼりたいものだ。 あぁ・・・
   − うぎゃあぁぁぁ〜〜〜押し潰されるぅぅぅ〜〜〜! −
 電車が急停車したせいだ。
 何人何十人もの体重が俺の体にのしかかる。 体の節々が痛くてたまらない。
 再び電車は動き出す。 しかし、俺はもう限界だ。 今すぐこの満員電車から降りて家に帰りたい。
   − そうだ、家に帰るんだ! −
 その瞬間、俺の頭の中の何かが弾け飛ぶ。
 目を凝らすと、壁際に非常停止装置の赤いボタンが見える。
 俺はそのボタンにそろりそろりと手を伸ばし、何かに憑かれたかのように力一杯そいつを押し込んだ。
 ゆっくりと電車が停車する。
 座席の下にあるレバーを引き、勝手にドアを開けて外に出る。
 スコーンと晴れ渡った青い青い空が実に気持ちいい。
 電車内では乗客達がザワザワと騒ぎ出している。
 外に出た俺を指差し、刺々しい視線で一斉に罵声を浴びせてくる。
 そんな奴等に向かって、俺は不適な笑みを浮かべ、こう呟く。
   − 家に、帰るんだ! −
 「フォーリング・ダウン」で、ブチ切れたマイケル・ダグラスが呟いたように。
 
 どこかの駅で、何人かの客が降り、何人かの客が乗り込んでくる。
 ドアが閉まり、電車は何事もなく動き出す。
 相変わらず、電車はうんざりするほど混んでいる。
 そして相変わらず、俺はその電車に乗っている。
 妄想から覚めた俺は、何気無く辺りを見渡す。
 いつものように、そこには無数の他人が乗っていて、
 いつものように、お決まりの車内アナウンスが流れている。
 現実は、映画のようにはならないものなのだ・・・。


                ― 「フォーリング・ダウン」のマイケル・ダグラスにハマってしまった映画ファンに捧ぐ ―
                                                    2007/08/26 
 
今日もどこかで・・・                         
 今日もどこかで・・・


 チャーン♪チャラララ♪ラララララーン♪・・・
 スクリーンにタイトルが映し出され、お馴染みのテーマ曲が流れ出す。
 もうこれだけで、観客は顔が緩み、心がワクワクしてくる。
 
 主人公の男が江戸川の土手を歩いている。
 水色のダボシャツにチェックの背広、首からお守りをぶら下げて腹巻きをし、
 雪駄を履いて使い込んだ大きなトランクを提げている。
 そして、ハットを被った四角い顔のアップ。
 
 観客はこの、にこやかな四角い顔を観て、ホッと安心するのだ。
 日常のいろんなしがらみから解放され、嫌なことを忘れ、これから始まる
 笑いと涙の物語に期待を膨らませながら、心の中でこう叫ぶのだ。
 
   − いよっ、待ってましたよ、寅さんっ! − 
 
 

 今日もスクリーンでは、おいちゃんとおばちゃん、さくらと博、タコ社長、
 御前様と源ちゃん・・・いつものメンバーと寅さんの掛け合いが始まっている。
 その度に、客席からドッと笑いが起こる。
 これだ! この瞬間が、俺はたまらなく好きなのだ。
 
 さくらが電話口で「お兄ちゃんっ??」と、さも驚いたように叫んでいる。
 おばちゃんも負けじと「ちょっとちょっと寅さんだよ!」と、いつものせっかちな口調で喚いている。
 そして、おいちゃんもいつものように「ばっかだねぇ〜〜〜!」と、顔をしかめながらほざいている。
 この繰り返しが無性に心地よい。
 
 笑いがあって涙があって人情がある。
 そして、寅さんや他のメンバーの姿が永遠にここにある。
 俳優死すとも映画は死なず。
 
 
 今日もどこかの名画座で、寅さんの映画が上映されている。
 今日もどこかで、寅さんと他のメンバーの掛け合いに観客が笑い転げている。
 今日もどこかで、寅さんの人情噺に観客が涙を浮かべている。
 今日もどこかで、寅さんとマドンナの恋の行方を観客が見守っている。
 そして、今日もどこかで、寅さんの、あのにこやかな四角い顔がスクリーンに映っている。
 今日も・・・どこかで・・・。


                       ― 「男はつらいよ」シリーズを愛する映画ファンに捧ぐ ―
                                                        2010/06/25 
 


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