「ラストシーン」

2002年 日本

監督:中田秀夫

出演:西島秀俊、 若村麻由美、 麻生久美子、 ジョニー吉長

1965年、テレビの普及により日本の映画産業は斜陽化への道を歩み始めようと
していた頃、女優・吉野恵子は結婚を理由に引退する。 共演したスター俳優
・三原健は、その頃から仕事が無くなり、妻も事故で失い、酒に溺れ、やがて
映画界から姿を消す。
2000年、映画撮影所では現場に不慣れなテレビディレクターが映画監督として
、テレビドラマの映画版を撮っていた。 シラケた現場にやる気を失っていた
小道具係のミオは、小さい役の代役としてやって来た老人と話すうちに、次第
にこの老人に心を開いていく。 この老人こそ、かつてのスター俳優・三原健
だったのだ・・・。
はっきり書こう。 俺はこの手の“映画への愛”を描いた映画にメチャ弱い。
どうしてだか分からないが、弱いんだからしょうがない。 “映画への愛”に
溢れた永遠の名作「ニュー・シネマ・パラダイス」が映画館を舞台にした映画
なら、この映画は映画撮影所を舞台にした映画だ。 「リング」の中田秀夫が
こういう映画を撮ったというのが少し以外な感じがするが・・・。
ここでも脇役陣がいい仕事をしている。 しかし何と言っても、この映画のた
めに10kgの減量をして撮影に挑んだというミュージシャン・ジョニー吉長の存
在感が素晴らしい。 年老いた三原健役を哀愁感を出しながらも、さりげなく
演じている。 それから西島秀俊も、若かりし頃のわがままな三原健役を好演
している。 日本映画黄金期のスターシステムへのオマージュ、現在の安易な
映画システムへ批判もさりげなく描かれており、エンターテインメントな感動
作と言えるだろう。
この映画は、映画を愛する人たちへの、そして何よりも映画を作る映画人たち
への熱いメッセージなのだ。